帰国準備 入門 2026.07.31

帰国したら国民健康保険が年100万円超

——前年の駐在給与で決まる仕組み
読了 約8分 ✓ 内容確認 2026.07.31 全7章
筆者:Jin|アメリカ駐在4年目・米国工場長

日本の製造業から渡米し、赤字工場を黒字化。実資産を 2,000万→6,400万円 にした過程を、失敗も実数字も公開しています。FPでも税理士でもない「自分で全部やった人」の記録です。著者の経歴 →

先に結論:国民健康保険料は「前年(1〜12月)の所得」で決まる。だから駐在から帰国した1年目は、収入がゼロや激減していても、駐在時の高い給与をもとに計算される。前年所得1,000万円クラスなら年間上限(2025年度で109万円/月約9.1万円)に張り付く。ただし「所得減少減免」を自分で申請すれば下げられる可能性がある。放置すると数十万円損する。

帰国して収入がガクッと落ちた。なのに6月に届いた国保の通知書を見て固まった——という話を、帰任した先輩から何度か聞く。

「帰国したら収入に応じた保険料に戻る」と思っている人が多い。でも実際は逆で、収入が一番少ない帰国1年目に、保険料が人生で一番高くなる構造になっている。ここを知らずに現金を厚めに置いておかないと、帰国直後の家計がいきなり圧迫される。仕組みと、下げるための手続きを整理しておく。

なぜ「収入ゼロなのに高額」なのか——国保は前年所得で決まる

まず用語を一つだけ。国民健康保険料は「前年1月〜12月の所得」をもとに、翌年度の保険料を計算する仕組みだ。今の収入ではなく、去年の収入で決まる。

計算式は多くの自治体でこの形になっている。

(前年所得 − 基礎控除43万円)× 所得割率 + 均等割(人数分)+ 平等割(世帯分)

会社員が入る健康保険(協会けんぽ・組合健保)は「今の給与」に料率を掛けて毎月天引きされる。だから収入が下がれば保険料も下がる。ところが国保は「去年の所得」基準。駐在の高い給与で働いていた年の翌年に帰国して国保へ加入すると、収入は激減しているのに、計算の土台だけは駐在時の高給が使われる。収入と保険料が逆転する仕組みだ。

しかも駐在員は給与ブースト(日本+現地手当)で年収が跳ね上がっているケースが多い。うち(Jin)の場合も渡米前は年収約1,000万円だったのが、駐在中は日米合わせて2,000万円弱まで上がっている。この高い水準が、帰国翌年の保険料の「前年所得」として効いてくる。

いくら来るのか——前年所得別の国保料モデル

国保には年間上限(賦課限度額)があり、高所得者はそこに張り付く。

賦課限度額(上限額)の推移(40歳以上・介護分込み)

年度年間上限月換算
2024年度106万円約8.8万円
2025年度109万円約9.1万円
2026年度113万円約9.4万円

出典:厚生労働省・賦課限度額資料(PDF)。40歳未満で介護分がない場合は上限がもう少し低い(2025年度で約92万円)。

前年所得別の年間保険料イメージ(料率は自治体でかなり違う。下は目安で、必ず帰国先自治体で試算すること)

前年所得の目安年間保険料の目安月換算
1,000万円上限に到達(2025年度で約109万円)約9万円超
700万円(単身・都市部の参考)70〜80万円台(要確認)6〜7万円台
300万円(札幌市・単身の試算例)約38万円約3.2万円

前年所得が1,000万円クラスなら所得割だけで上限に届いてしまうことが多い。世帯人数が多ければ均等割が積み上がり、月10万円に迫る家庭も出てくる。数字の参考は三菱UFJ銀行の解説(札幌市の料率例)国保料改定の解説で確認できる。

住民票を残したか、海外転出届を出したか——ここで金額が変わる

帰国後の保険料は、駐在中に住民票をどう扱っていたかでも変わる。意外と見落とされるポイントだ。

駐在中の住民票の扱い前年所得の扱い(帰国後の国保)保険料への影響
住民票を日本に残したまま赴任(企業内転勤に多い)日本の居住者として、海外給与も含めて日本で申告・課税前年所得が高くなり、保険料も高くなりやすい
海外転出届を出して非居住者になっていた「前年中の日本国内の所得はゼロ」と扱える自治体もある帰国後の保険料が大きく下がる可能性

ただしこの扱いは自治体の窓口判断が絡む部分があり、加入手続きのときに前年所得の申告を求められる。帰国先の役所で確認するのが先決だ(出典:寝屋川市の帰国後国保FAQ)。

「海外転出届を出す=非居住者になる」という選択は、国保だけの話じゃない。非居住者になるとNISAが継続できず強制解約になる、といった別の影響も同時に起きる。この辺りは出国前のPFIC・非居住者になるときの整理で書いた話とつながる。住民票をどうするかは、赴任前に会社任せにせず自分で理解しておきたい。

高額請求を下げる2つの救済策

どちらも自動では効かない。動かないと損する。

① 所得減少減免(最重要・要申請)

今年の収入が前年所得より30%以上減っている場合に申請できる制度。帰国で無職・収入激減の1年目は、まさにここに当てはまる人が多い。

前年からの所得減少率所得割の減額割合(一例)
30〜40%減30%減額
50〜60%減50%減額
70〜80%減70%減額
100%減(収入ゼロ)100%減額

上の減額率は全国共通の法定値ではなく、自治体ごとに異なる。東大阪市の所得減少減免の区分を一例として引いたもので、帰国先自治体の数字を必ず確認してほしい。

注意点が2つ。減額されるのは「所得割」の部分だけで、均等割・平等割は原則対象外。株や不動産の譲渡所得の減少は対象外で、再就職して他の保険に入る予定の人も対象外になることが多い。申請期限(初回納付期限まで、など)も自治体で違うので、帰国したらすぐ窓口に相談するのが先だ。

② 法定軽減(7割・5割・2割)

前年所得が低い世帯向けに、均等割・平等割が自動で軽くなる制度。ただし判定も前年所得ベースなので、前年に高い駐在給与があった人は基本的に該当しない。「帰国1年目は使えないが、翌年以降は効く可能性がある」と覚えておけばいい(詳細は板橋区の軽減・減免ページなどで確認できる)。

判断の分かれ目はシンプルで、帰国1年目で収入が激減しているなら所得減少減免を申請。翌年以降で世帯所得が低く落ち着いたら法定軽減が自動で効くか確認。前者は申請しないと1円も下がらない。

住民税との「二重爆弾」に注意

もう一つ重い事実。帰国翌年は、国保と住民税が両方とも「前年の駐在給与ベース」で同時に請求される。住民税も前年所得課税の制度で、こちらは前年所得の10%前後が相場。前年1,000万円クラスなら住民税だけで100万円規模になり得る。

収入が最も少ない時期に「国保(年100万円級)+住民税(100万円級)」が重なって降ってくる。住民税側の仕組みと備えは帰国後にやってくる住民税爆弾の記事にまとめた。国保とセットで読んでおくと、帰国1年目に必要な現金の総額が見積もれる。

救いは時間軸だ。前年所得課税ということは、帰国2年目は「帰国後の実際の所得」が基準になる。日本で稼いだ額が下がっていれば、国保も住民税も2年目には大きく下がる。高額請求は「1年間の嵐」。ここを知っているかどうかで、帰国前の現金の置き方が変わる。

僕の場合:まだ社保・会社任せ。だから今、確認していること

正直に書くと、僕自身はまだこの国保爆弾を食らっていない。駐在4年目で、いまも日本の会社の社会保険に入ったままだ。出国時の年金・健康保険の手続きも会社任せで、自分で国民年金の任意継続などを動かした記憶はない。だからここに「こう請求されて、こう申請して下げた」という実額は、まだ書けない(要確認:帰国後、実際の通知書額と減免申請の結果をここに追記する)。

帰国が視野に入ってきた今、他人事じゃない。だから今やっているのは、①帰国先自治体の所得割率と減免制度の区分を先に調べておく、②帰国1年目に「国保+住民税」で消えるおおよその金額を現金で別枠にしておく、の2点だ。駐在の手続き全般で痛感してきたのは、制度は自分で確認して一個ずつ潰さないと、誰も代わりに最適化してくれないということ。国保の減免申請も、知って動いた人だけが得をする。

よくある質問

Q. 帰国後の国民健康保険はいつから、いくら請求されますか?

国保料は毎年6月頃に新年度分(4月〜翌3月)が決定・通知され、多くの自治体で7月から翌3月の年10回に分けて納付する。金額は前年所得ベースで、駐在時の高給が反映される帰国1年目は年間上限(2025年度で約109万円・月約9.1万円)に達することもある。正確な額は自治体の料率で変わるので、帰国先の役所で試算してもらうのが確実。

Q. 収入が激減したのに保険料が高い。下げる方法はありますか?

「所得減少減免」がある。前年より所得が30%以上減っていれば所得割部分の減額を申請できる制度で、帰国1年目の収入激減はこれに当てはまりやすい。自動適用ではなく申請が必要で、申請期限も自治体ごとに違う。帰国したらすぐ役所の国保窓口に相談を。均等割・平等割は原則減額対象外な点に注意。

Q. 海外転出届を出していれば保険料は安くなりますか?

その可能性はある。海外転出届を出して非居住者になっていた場合、「前年中の日本国内の所得はゼロ」として扱える自治体があり、帰国後の保険料が大きく下がることがある。一方、住民票を日本に残したまま赴任していた人は海外給与も日本の所得に含まれ、保険料が高くなりやすい。扱いは窓口判断が絡むので、加入手続き時に必ず確認を。

免責

この記事は一人の駐在員の実体験の記録であり、投資・税務・法律の助言ではありません。 投資は自己責任で、税務は必ず専門家にご相談ください。制度・手数料は執筆時点の情報です。 詳しくは免責事項へ。

🧭 1分診断:あなたが帰国前にやるべきお金の手続きだけを優先順に表示します(無料・登録不要)→

BOOK

『駐在のお金、全部やってみた』

このブログの4年分の記録を、出国前→着任→駐在中→帰国の時間軸で1冊に再構成しました。 失敗の実額と実ポートフォリオまで、全部載せています。