仮想通貨の含み損−49%で帰国が決まった。損切りしても、株と違って確定申告で相殺できなかった話
この記事の結論(先に3行) 仮想通貨の損失は、2026年時点では株・FX・給与・配当と損益通算できません(所得区分が「総合課税の雑所得」で別枠だから)。だから帰国前に損切りしても、節税効果はゼロ。しかも仮想通貨の損失は翌年に繰り越すこともできないので、その年で消えます。「投資の損失は確定申告で相殺できる」は株の常識で、仮想通貨には効きません。
帰国の話が出たとき、僕の仮想通貨は含み損−49%だった。ざっくり半分。
最初に考えたのが「どうせマイナスなら損切りして、確定申告で他の利益と相殺すればいいか」だった。株ならそれで税金が軽くなる。そう思い込んでいた。
調べて、それがまるっきり勘違いだと分かった。仮想通貨の損失は、株ともFXとも給与とも損益通算できない。損切りしても節税にならない。この記事は、そのとき僕が整理した内容を、これから同じ状況になる駐在の人向けにまとめたものです。
僕はFPでも税理士でもないので、最後は必ず自分で一次情報を確認してほしい。ただ「知らずに帰国前に慌てて損切りする」ことだけは、この記事で避けられるはずです。
そもそも「損益通算」とは何か——株の常識が通じない理由
損益通算とは、ある所得の赤字を、別の所得の黒字から差し引いて課税対象を圧縮するしくみです。
株で例えると分かりやすい。A株で50万円の損、B株で80万円の益なら、差し引き30万円だけに課税される。株はさらに、引ききれなかった損失を最大3年間繰り越せる(租税特別措置法の上場株式等の譲渡損失の繰越)。だから「投資で損したら確定申告しておけ」が定番のアドバイスになっています。
問題は、この常識が株・FXという特定の枠の中だけの話だということ。仮想通貨は、その外にいます。
なぜ仮想通貨だけ損益通算できないのか——「所得区分の壁」
日本の所得税は、所得を10種類に区分します。給与・事業・利子・配当・不動産・退職・山林・譲渡・一時、そしてどれにも当てはまらない「雑所得」。仮想通貨の利益は、この最後の雑所得(総合課税)に入ります。
損益通算は、原則として同じ所得区分の中、または法律が明示的に認めた組み合わせでしか使えない。ここが壁です。
| 相手 | その所得の区分・課税方式 | 仮想通貨の損失と通算できるか |
|---|---|---|
| 国内株式 | 譲渡所得・申告分離課税 | できない(区分も課税方式も別) |
| 国内FX | 先物取引の雑所得・申告分離課税 | できない(分離課税で別枠) |
| 給与 | 総合課税 | できない |
| 配当(分離課税を選択) | 申告分離課税 | できない |
| 海外FX・副業などの雑所得 | 総合課税・雑所得 | できる(同じ区分だから) |
| 他の仮想通貨の利益(同年内) | 総合課税・雑所得 | できる |
同じ「投資の損」でも、株は分離課税、仮想通貨は総合課税の雑所得。入れ物が違えば制度も別物です。駐在員が国内株の含み益を持っていても、そこと相殺することは制度上できない。通算できる相手は「同じ総合課税の雑所得」——海外FXや副業の雑所得くらいに限られます。
事実の裏取りは、国税庁のタックスアンサーNo.1524「暗号資産を使用することにより利益が生じた場合の課税関係」が出発点になります(最新版・FAQの版数は各自確認を)。
「最大55%」の正体——株の20.315%と何が違うか
もうひとつの落とし穴が、税率です。
仮想通貨の利益は給与などと合算され、累進税率がかかります。所得税は最大45%、住民税10%を足すと最大55%。復興特別所得税まで含めると55.945%です。株・国内FXは分離課税で一律20.315%。同じ「投資の利益」でも、税率が2倍以上違うことがあります。
給与1,000万円の駐在員が仮想通貨で200万円の利益なら、その200万円に所得税33〜40%+住民税10%で合計43〜50%近くかかる計算になります(僕の概算。課税所得によって変わります)。
仮想通貨は「利益が出れば税率が重く、損失が出れば通算もできない」という非対称な構造。駐在員にはなかなか厳しい。
帰国前に損切りしても、その損失はどこにも使えない
ここが今回のいちばんの落とし穴でした。
仮想通貨の損失は、株と違って翌年以降に繰り越せない(現行制度)。その年で消えます。含み損−49%で損切りしても、その損失額は確定申告のどこにも書きようがなく、通算相手もいないまま蒸発する。
唯一意味があるのは、同じ年に別の仮想通貨の含み益があってそれを利確する場合だ。損切りと利確を同年内でぶつければ、その範囲でだけ相殺できる。それ以外に使い道はない。
僕はここまで調べて、「帰国前に節税目的で慌てて損切りする」という選択肢を頭から消しました。売る理由が税金にはなかったからです。(※実際に売ったか・持ち続けたかの最終的な処理は 要確認: Jinの実体験に置き換え。少なくとも「節税のために売る」動機は消えた、というのがこの時点の判断です。)
この「制度に強制されて動く/動けない」感覚は、渡米前にNISAの投信を非居住者になると続けられず強制売却した経験とよく似ています。あのときも投資判断ではなく制度で動かされた。仮想通貨も同じです。税制という枠にこちらの選択肢が縛られる。
2028年から「分離課税20%」へ。でも2026年の申告は現行のまま
「仮想通貨も株みたいに20%になるって聞いたけど?」——よくある混同なので、時系列を分けておきます。
令和8年度(2026年度)税制改正大綱に、仮想通貨を申告分離課税20.315%へ移行する方針が盛り込まれたのは事実です。ただし適用開始は「金融商品取引法の改正法の施行日の属する年の翌年1月1日以後」で、最速でも2028年1月の見込み(MONEYIZMの解説などが整理しています)。
| 項目 | 現行(2026年の申告) | 改正後(最速2028年〜) |
|---|---|---|
| 課税方式 | 総合課税・雑所得 | 申告分離課税(予定) |
| 税率 | 最大約55% | 20.315%(予定) |
| 損失の繰越 | 不可 | 可能になる方向 |
| 通算相手 | 総合課税の雑所得のみ | 特定の仮想通貨同士にとどまる見込み |
大事なのは2点です。2026年に申告する分はまだ現行の総合課税のまま。改正後も「株・給与との通算」は認められない方向で、仮想通貨同士の枠が整うだけとみられています。しかも対象は「登録事業者が扱う特定暗号資産」で、海外取引所やDEXが対象外になる可能性もある(この点は大綱の文言次第で、要確認)。「2028年まで待てば全部解決」ではないわけです。
非居住者のうちに売ればどうなる?出国税は?
駐在ならではの論点として、居住者か非居住者かで扱いが変わります。
非居住者(海外赴任中)が仮想通貨を売却した場合、原則として日本の所得税は課されないとされています。仮想通貨の譲渡が「国内源泉所得」の限定列挙に入らないためです(非居住者と暗号資産の扱いの解説)。
出国税(国外転出時課税)の対象は「有価証券等」「未決済デリバティブ」に限定されており、仮想通貨は対象外。含み益が1億円超あっても、暗号資産だけなら出国税は発生しません。
ただし今回の僕のように含み損の場合、居住者として売ろうが非居住者として売ろうが、「損失を他の所得と通算できない」という制約は変わりません。非居住者だと日本で課税されない=損失も日本の申告に載せられない、というだけです。含み損には出国のタイミングは効いてこない。
なお「生活の本拠」がどこかで居住者判定が変わる微妙なケースは、ドル転や円転の税金と同じく個別性が高いので、金額が大きければ税理士に確認するのが安全です。
帰国前にできる「合法的な調整」の判断軸
損失を抱えたまま帰国が決まったとき、何ができるのか。選択肢は限られますが、整理するとこうなります。
| 状況 | とれる選択 | 向いている人 |
|---|---|---|
| 同じ年に別銘柄の含み益がある | 損切り+その益を利確して同年内で相殺 | 益銘柄も抱えていて年内に整理したい人 |
| 海外FXなど総合課税の雑所得の益がある | その益と通算する | 同区分の雑所得を持っている人 |
| 相殺相手が何もない | 税目的の損切りはしない(意味がない) | 僕のように通算相手がいない人 |
| 相場回復と2028年改正に賭けられる | 持ち続けて、改正後の繰越制度を待つ | 損失を確定させたくない・待てる人 |
結論だけ言えば、通算相手(同年の仮想通貨益か総合課税の雑所得益)がいなければ、税金のために売る意味はない。売る・売らないは、税金ではなく「その資産を今後どう扱いたいか」——相場観や現金化の必要性——で決めるべきです。それが僕の到達点でした。
なお「配偶者に贈与すれば?」という発想もありますが、仮想通貨の贈与は時価で贈与税評価され、含み損そのものを相手に引き継いで節税という使い方はできません。ここは扱いが細かいので、動く前に税理士確認が必須です。
僕自身は普段から、為替も145円くらいの円安局面で腹を括ってドル転する程度で、細かいタイミング投資はしていません。仮想通貨も結局、「税金で動く理由がないなら、無理に動かさない」に落ち着きました。
まとめ
正直に言うと、−49%の画面を見ながら「せめて確定申告で取り返せる」と思っていた自分が、いちばん恥ずかしかったです。株の常識をそのまま貼り付けていた。
でも調べて分かったのは、慌てて損切りしなくてよかったということ。もし「節税になる」と信じたまま帰国直前に売っていたら、税メリットゼロで損失だけを確定させて終わっていました。知っているだけで、少なくとも「間違った理由で動く」のは防げます。
含み損は、まだ含み損のままです。それが正解だったかは相場が決めることで、今の僕には分かりません。ただ、税制を理由に手放すことはもうしない。それだけは決めました。
よくある質問
Q. 仮想通貨の損失は、株の利益と損益通算できますか?
できません。株は「譲渡所得・申告分離課税」、仮想通貨は「雑所得・総合課税」で、所得区分も課税方式も別枠だからです。同じ「投資の損」でも制度が違うため、株や国内FX、給与、配当とは相殺できません。通算できるのは、同じ総合課税の雑所得(海外FXや副業の雑所得など)や、同じ年の他の仮想通貨の利益に限られます。
Q. 帰国前に損切りすれば節税になりますか?
通算する相手がいなければ、なりません。仮想通貨の損失は翌年以降に繰り越せず、その年で消えます。相殺できるのは「同じ年の仮想通貨の利益」か「総合課税の雑所得の利益」だけ。それらが無い状態で損切りしても、税金は1円も軽くならず、損失だけが確定します。
Q. 2028年に分離課税20%になれば、株と通算できるようになりますか?
現時点の方針では、株や給与との通算は改正後も認められない見込みです。令和8年度税制改正大綱に盛り込まれた分離課税化(最速2028年1月〜)で整うのは、仮想通貨同士の損益通算と損失繰越が中心とされています。しかも2026年に申告する分はまだ現行の総合課税のままなので、「待てば全部解決」ではない点に注意が必要です。
この記事は僕自身が調べて整理した内容で、税務アドバイスではありません。金額が大きい場合や個別の判断(居住者判定・贈与・海外取引所の扱いなど)は、必ず一次情報と税理士に確認してください。
この記事は一人の駐在員の実体験の記録であり、投資・税務・法律の助言ではありません。 投資は自己責任で、税務は必ず専門家にご相談ください。制度・手数料は執筆時点の情報です。 詳しくは免責事項へ。
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『駐在のお金、全部やってみた』
このブログの4年分の記録を、出国前→着任→駐在中→帰国の時間軸で1冊に再構成しました。 失敗の実額と実ポートフォリオまで、全部載せています。